- 経営層・管理者インタビュー
関東のSEから地元の後継者へ~青森県出身者のUターンストーリー~
取締役兼 農場長 五日市さんのご紹介
学生時代を三沢市で過ごした五日市さんは、関東でSEの経験を積んだ後、地元へUターン。家族の幸福と新たな挑戦への思いから、SEの道から農業の世界への転身を決意されました。後継者として、生まれ故郷にUターンした五日市さんの熱い思いや、これからの農業への展望をお伺いしました。
- 取締役兼 農場長 五日市 勇輝さんのプロフィール
- ・青森県立三沢商業高等学校を卒業。
- ・八戸学院大学 ビジネス学科でホームページ作成などのIT関連を学び、SE(システムエンジニア)の職に就きたいと考えるように。
- ・東京の会社にSEとして約5年間在籍し、地元へUターン。
- ・2015年3月 五日市青果へ入社。
- ・2016年 十和田市場での長芋、ゴボウの競売(せり)担当に就く。
- ・2020年 農場長に就く。
- ・2023年 取締役兼 農場長に就く。
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大胆な転身と成功への探求心
当時27歳だった私は、関東での生活を送っていました。今の安定した仕事を離れて未知の農業に身を投じるという覚悟は、正直に言えば不安でした。しかし、「生まれ故郷である三沢を地元の特産物で盛り上げたい!」と考え、新たな一歩を踏み出す決断をしました。
その当時、農業についての知識がなかった為、ほぼ独学で農業の知識を吸収していく必要がありました。将来的には事業を受け継ぐ予定だったため、最初は農業の勉強と現場で働くことに専念しました。収穫のたびに結果が現れるサイクルを繰り返し、次の作物に向けて微調整を行い、試行錯誤を重ねました。種まきの撒き方や、肥料や薬品の適切な量などを数字化し、データ管理を蓄積しやすくしていきました。
農場長に就いてから一年経ち、ようやく自身の成果が認められた瞬間は感動的でした。社内外から「以前よりも良い野菜を育てているね」「よくやった」という言葉をいただいた時は、涙があふれるほどの喜びを感じました。これが私の更なる原動力となり、幅広い農業に関する知識や経験を全スタッフに共有し、共通の目標に向かって舵を切ることができるようになりました。
120,000坪の広大な畑で育む品質と鮮度保持
うちの主力商品は、ゴボウ(約54,000坪)です。その他にも、人参(約20,000万坪)と長芋(約6,000坪)を栽培しています。私たちが追求する高品質の野菜は、スーパーマーケットに並ぶ大きく艶のある野菜です。さらに、これらの野菜は全国の卸売市場に供給されるため、長距離輸送の際には傷のつかない高品質な状態を保つことが重要です。この業界が初めての方でも、傷のない高品質な野菜の栽培方法やコツ、道具の使い方から丁寧に指導します。学びやすい環境の中で、自信を持って次のステップに進んでいただけるよう成長をサポートしています。
キャリアステップのサポート
新入社員の方々には、フォークリフト免許や大型特殊免許の取得と業務の補助に従事していただくことからスタートします。免許を持っていない方でも安心してご応募いただけます。実際に私も入社後にフォークリフト、大型特殊、けん引、大型などの免許資格を取得しました。一年を通じて、マンツーマンで担当業務を学んでいただき、翌年には農場長候補として一人立ちできるよう、全面的にサポートします。
一昔前までは、「農業の収益は不安定」と言われていましたが、うちでは大手メーカーや全国の中央市場への卸先など、安定した取引が多くあります。給与の昇給や職位別手当、さらには家族手当も充実しており、お子さん1人につき5,000円の手当を支給しています。福利厚生にも力を入れており、今後もさらなる向上を目指しています。
また、小さなお子さんを持つスタッフも在籍しており、急なお迎えなどにも柔軟に対応できる体制を整えています。お子さんの健康は親にとって重要なこと。そんな事情を理解し、スタッフを第一に考える風土が根付いています。急なお迎えの際にも、みんなが協力してサポートする雰囲気があります。
さらに、不定期になりますが作業中に使えるオリジナルジャンパーやエプロン、クリスマスケーキなどを配布したこともありました。一人ひとりのスタッフを大切にし、働きやすい環境づくりを積極的に整備していくことにも取り組んでいます。
多様性の和を活かし、スタッフの成長の芽を大切に
うちには20~80代まで、約40人のスタッフが在籍しており、私から積極的に話しかけて、山菜の話からトレンドの話題まで教えてもらっています。この些細な会話から、スタッフの価値観や考え方を知ることができます。スタッフが心地よく働ける環境を作るため、どのように接すれば良いかを考えるヒントにしています。
仕事の不満や悩み、プライベートのことなどを共有し、小さな悩みを解消するお手伝いをしています。必要であれば外食に誘ったりもして、相談相手になれるような関係を築いています。スタッフが長く在籍してくれることは、私にとって大きな喜びの一つです。
また、仕事以外の時間には、様々な交流の機会を大切にしています。具体的には、参加自由型の歓迎会や忘年会の開催。また、うちの会社にはベトナム出身のスタッフが在籍しているので、七夕まつりや十和田湖の紅葉、初詣などのイベントに連れて行ったり、ベトナムのスタッフが故郷の料理を作って私たちを招いてくれたり、国境を越えて楽しい時間を過ごすこともあります。多様性を尊重し、それを活かした仲の良さもうちの魅力ですね。
農場長として多方面への経営管理
現在の私は農場長として運営や社長のサポートを担当し、会社全体の管理や経営に関わっています。朝は畑スタッフに業務指示を出し、特に夏場はスタッフの体調管理に気を配りつつ、作業環境を改善しています。午後には翌日の作業計画を立て、畑の状態や収穫予定に基づいて調整します。畑巡回や農業機械の点検も怠りません。フォークリフトやトラクターの点検と修理も担当し、日々の生産性向上とスタッフの作業環境改善を図っています。
農業の魅力は、市場の状況により取引価格が変動することです。2020年、農場長に就任した際は、コロナの影響で国産野菜の需要が急上昇しました。一方で価格が低い時には苦労することもありますが、高値で取引が成立すれば大きな利益を得ることができます。農業は試行錯誤の連続で、小さな成功を積み重ねて大きな成功を収める瞬間もあります。その波の中で、私たちはお互いを支えながら成長し、新たな挑戦を続けています。
次代への継承と新たな挑戦
うちは120,000坪の広大な畑と6,000坪の敷地にある巨大冷蔵庫や加工場などの設備を持っています。先代の苦労と大変さを胸に刻みつつ、事業の引き継ぎを進めています。その際には、事業の継承と未来へのビジョンを共有することが非常に重要だと思っています。先代が確立した安定した販路に比べ、私は自分の力がまだまだ小さいと感じています。今の先代が築いた礎を守りながら、もし可能であれば新たな事業展開をしたいと考えています。例えば、地産地消をコンセプトとした飲食店を出したり、地域特産品の商品開発を通じて、三沢の魅力を広めていきたいです。これからも品質の良い商品を提供し続け、全国の人々に喜んでもらえることを目指していきます。後継者として、また次の世代に引き継げるよう、守り育てていきたいと思っています。