- 社長インタビュー
人の流れ、ライフスタイル、新しい価値を生み出す建築を。
生まれ故郷である青森県十和田市で設計事務所を立ち上げた杉山さん。名だたる設計事務所で培ってきた実績と、これまで大切に紡いできた人との繋がりで、全国を股にかける杉山さんに建築について伺ってきました。
- プロフィール
- ・宮城大学(事業構想学部 デザイン情報学科 空間デザインコース)で建築の基礎を学ぶ。
- ・国内有数のアトリエ系設計事務所(石上純也建築設計事務所や乾久美子建築設計事務所)や、ティーハウス建築設計事務所、フロンティアコンサルティングを経て、2018年12月に独立。
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建築の道を決めた“ルイス・バラガン”との出会い
高校3年生の時に人生を決める運命的な出会いをしました。メキシコの建築家“ルイス・バラガン”です。
当時は進路を決める時期で、どこの大学にしようか決め兼ねていました。そのタイミングに、たまたま見たテレビ番組で彼を知りました。
水面や光を大胆に取り入れ、中南米メキシコの暑い気候に合ったような色調や、植物や石などの素材感を感じさせるような設計がルイス・バラガンの特長です。その世界観に圧倒され、普通科で予備知識もないまま「建築」の道へ進むことを決めました。
幼少期から手先が器用で、プラモデルを作ったり、絵を書いたりして遊んでいたので、建築の勉強の中でも模型や図面など細かな作業が性に合っていました。そんなこともあり、学生時代から一度も建築の作業を嫌だと思ったことがなく、この世界でやっていくことが必然となりました。
自身のルーツから派生した「いい建築」を
私の建築は、光と素材感を大切にしています。それを教えてくれたのはバラガンです。素材感と光が溢れるようなバラガンの建築、これが私の原点です。
建物は四方を屋根と壁に囲まれているため、窓か、照明を使って光を取り入れます。その光や照明の足し引きや角度、反射率を考えることによって、機能を超えた空間の広がりやモノの見え方、質感といった感覚に訴えかける仕掛けも可能となります。また同じ空間形状だとしても、色やマテリアル(素材)によって、異なる見え方や、時間の経過による朽ち方なども加わってきます。それらを考えながら設計された建築が「いい建築」だと考えています。
住宅であろうが、ホールであろうが、コンビニであろうが、その基軸は変わりません。
毎日を健やかに暮らせる環境で仕事を
創業するタイミングで十和田市に戻ってきました。地元に帰ろうと思ったのは、特定の場所でなくても「建築できる」と感じたからです。
学生時代に過ごしたキャンパス、アパート、仕事で訪れた都会のビルやオフィス、いろんな街で見てきた建築。それらを俯瞰で捉えた時に、自分は都会よりも田舎の風景や環境の中で「建築する」方が向いていると思いました。
田舎の中でも、東北、もっと言うと青森県は、四季がはっきり感じられる土地。三方海に囲まれ、豪雪地帯もあれば、小雪地域もある。雪の降り方にも差があり、夏は基本的に涼しく短いけれど、ちゃんと暑さも感じられる、そこが魅力だと思っています。
田舎だとか、自然とかではなく、毎日を健やかに暮らしていける環境を!と思った時に、青森県が自分にすごく合っていると感じ、地元で創業することにしました。
10のものを、違う10に変える建築へ
自分の仕事を人に話すと、「設計の枠を超えている」とよく言われます。
0から1、2を作っていくことはもちろんのこと、私は進行中の現場に途中から加わったり、設計後の建築デザイン監修を行ったりすることも得意としています。共通しているのは、発注者の意向を正しく汲むということです。
依頼とは言えプロジェクトの途中から加わることは簡単ではありません。まずは現行の工事関係者さまがいらっしゃいますから、その方々と齟齬や失礼が無いようにする必要があります。そして全工程を把握し、クライアントと現場を繋ぐコミュニケーション能力と調整力が求められます。他にも予算やスケジュールから逆算し、“できる範囲の中で”最大限の仕事をします。
世間一般のクライアントの要望を図面に起こす「建築設計」以上の事を求められていると思っています。
そういったことの先にある、盤上一致で「杉山さんだからこの建築が生まれた」という仕事をしていきたい、「10」までできているものを、違う「10」に変える建築を目指していきたい、それが私の目指す建築です。
人の流れ、ライフスタイルをつくる「建築」を目指して
クライアントからの仕事は、公共施設や商業施設などの大型建築物もあれば、オフィスやビル、ホテルなどの高層建築物、そして住宅や店舗などの小規模な建物もあります。
相談内容も、ゼロから関わるプロジェクトもあれば、施工途中からデザイン監修だけ関わる案件など、大小さまざまありますが、どんなプロジェクトであっても、「建築する」ことは、街並みを変えるだけではなく、人々の生活やライフスタイルにも大きな影響を与えられると感じています。設計の「枠」を超え、人々に新しい価値や心の変化を与えられる「建築」を創っていきたい、そして、未来を担う子どもたちに、そんな体感ができる環境を残していきたいと思っています。