- 社長インタビュー
地域に求められた会社をこれからも
青森県六ヶ所村で事業を行うATOM Works株式会社。代表取締役である岡山康広さんに、これまでの人生の歩みについて、事業者様の要請から生まれた会社の成り立ちの背景、そして社員について、会社の経営方針などについてお聞きしました。安全・安心に原子力関連施設を運営していくという会社の使命、そのために必要とする人材について語っていただきました。ぜひご一読ください。
様々な経験を積んだ学生時代
当社は元々、私の父が地元六ヶ所村で経営した株式会社岡山建設を母体にする会社です。会社を経営する父の背中を見ながらも、次男だったこともあり、自分は家業を継ごう!といったような気負いはなく、学生時代には土建業とは全く違う分野のことを学んでいました。大学ではコンピューターサイエンスを学んだり、家庭教師・塾講師・居酒屋などでアルバイトをしたりして過ごしました。
今振り返ると、こうしたアルバイトでの接客経験の方が、社会人になってからの対人関係作りに活きたような気もします。その後、大学院まで進んだのちに、地元に帰ってきて、そのまま岡山建設に入社となりました。
地元の要請から生まれた会社
ATOM worksの母体となっている岡山建設のことから少し説明しますね。私の父が創業した当時、ほぼ一次産業しか基盤がなかった六ヶ所村に誘致された原子燃料サイクル施設の建設に向けて、土木・建設業が賑わっていました。その中の1社が岡山建設でした。
電力・原燃関連施設の建物建設が一通り終わると、次はそのメンテナンスの仕事や、施設操業開始後の業務のニーズが生まれてくる訳ですが、その要請が当社の設立の始まりです。
具体的には、使用済み核燃料再処理工場が稼働し始めると工場や設備の安全・安心・安定した操業のために定期的なメンテナンスや突発的なトラブルに対応できる地元企業や技術者が必要不可欠になります。また大量の放射性廃棄物が生まれるため、それらを特殊な容器に保管し、安全に処理していくことが求められます。その金属製の容器を調達する先が地元にはなかったため、首都圏・関西など遠方の企業から調達せざるを得ないという状況の中、当社が製造・販売することでその役割を担おうということを背景に当社は創業しました。
事業者様が参考にしたのは原子力発電と使用済み燃料再処理、いわゆる原子燃料サイクルが確立しているフランス。フランスの原子力関連施設の周囲には、その運営を支える関連地元企業が技術力を身につけ、地元で物資調達ができる仕組みが整っています。そのような体制作りを六ヶ所でも目指し、生まれた原子力関連企業の1つが当社だったという訳です。
しかし、当時の岡山建設は建設会社で、当然のことですが土建業の知識はあっても、機械加工や設計の知識は持ち合わせていません。そんな中でも「地元にものづくりの基盤を作りたい。ないなら学びながらうちがやろう」という創業者の気概のもと、当社は生まれ、地元の人間として、地元の産業に貢献できる会社作りを目指しました。
ちょうど私がUターンしてきた2003年頃、岡山建設の新規事業として「プラント事業部」が発足し、施設で使われるバルブや機械設備のメンテナンスを担えるよう技術習得を目指しました。私自身も大阪の企業へと出向させてもらいながら、メンテナンス業務を学びました。そして2010年、ATOM Works株式会社が創業したというのが経緯となります。
当社の事業内容について
ATOM Worksはメンテナンス業務とものづくりの両面を担っています。メンテナンス事業として担っているのはバルブメンテナンスや機械・計装設備などの保守・点検業務。当社では多くの社員が「職長・安全衛生責任者」「ステンレス銅溶接技能者」「電気工事士資格」といった資格取得をしながら、設備の健全性・安全・安定運営をサポートしています。
ものづくり事業に関しては当初非常に苦労しました。原子力関連施設の稼働がない中で、創業間もない時期は、技術の裏付けも実績もない会社である当社へ仕事を依頼いただく会社も少なく、その一方で仕事がなければ技術者の技術も磨かれていきません。そんな中、定期的にマッチングフェアに参加しつつ、製缶溶接のニーズを探り、ステンレス/鉄製部品・製品の製作を請け、技術力を高めながら今現在に至ります。3年前にISOを取得し、現在はものづくりのスペシャリストとして県より「青森マイスター」として認定を受けている技術者もいます。
県内でも有難いことに当社を認知してくださる会社も増え、お声がけいただくことも増えてきました。原子力関連事業以外で、当社の技術力を活かせる領域を今後も模索し続けていきます。
技術力のまえに、人間力を重視
当社の社員の特徴は、人間的に気持ちの良い人が多いということですかね。人のせいにしたり、批判ばかりするような人は自然と離れていったように思います。人間的に穏やかで温厚な人が多いですね。それは、施設の安全・安心を守り維持管理していくことを使命の一つとする私たちの事業領域とも結びついているかもしれません。
多少人見知りであったり、口数が少なくてもかまいません。元から製造業への知見や経験、保守点検業務の経験がある方はありがたいのですが、技術力の前に人間性を重視しています。チームで動く職場ですから、周りのことを考えて、お互いにサポートし合いながら最大限に努力出来る方と働きたいですね。工業高校を出ているとか、工学部を出ているといった学歴も関係ありません。やりたいという気持ちと、素直に吸収していきたいというスタンスをお持ちの方を歓迎しています。
社員の成長が、経営者としての源泉
私達の会社の使命はこの再処理施設の安定稼働に向け、安全安心に事業を行っていくこと。この会社を継続していくことそのものが、我が国のエネルギーセキュリティを支援していくことに繋がっていくと思っています。
原子力をとりまく情勢も時代の流れと共に変化していますし、この新型コロナウイルス感染症の猛威など、予測不能な社会において、現状維持は衰退だと考えています。衰退しないためには、動き続けるしかない。壁も多いと思いますし、これまでも多くの壁を乗り越え続けて今に至っています。
そんな中、経営者の私にとっての最大の喜びは社員のみなさんの成長です。頑張っている社員が、社外からも評価され、成長していることを感じる瞬間がなによりも原動力となっています。私達の経営理念や使命に共感し、共に壁を乗り越えていけるような方であれば、力量関係なく採用していきたいと考えています。ぜひ、想いを共にしていただける方は、一緒に頑張りましょう。