地方と首都圏をつなぐhub構想　～創業メンバーがIT人材創出を語る～

まず初めにお二人の出会いと、創業の背景を教えてください。

私が起業する前に勤めていたIT派遣会社に、窪田が新卒で入社してきたのが出会いかな？

そうですね。最初は先輩後輩の関係だったところを、上司部下の関係まで引っ張ってくださったのが村岡さんでした。当時から「起業」については、形はどうあれいつかするんだろうなと何となく感じていました。

懐かしいね～。思い返せば前職では、炎上プロジェクトに私が駆り出されることが多く、いわゆる「火消し屋」みたいな役割でした。当時のプロジェクトメンバーには技術的な問題に敏感なメンバーがいたんですよ。いわゆる問題を発見してしまうタイプ。今思えばエンジニアにとって「気づく」という嗅覚は非常に大切なことで、それによって大きな障害を未然に防げたケースもたくさんあります。ただ、お客様からすると「なぜ構築時点で気づかなかったのか」「今更修正作業は難しい」などの意見があったり…。そこに投入されるのが私で、問題整理からスケジュール調整、お客様との折衝など、プロジェクトの初期消火をしていくのが私の役割でした。その後、ある程度プロジェクトが落ち着いてきた段階で、窪田にバトンタッチし、プロジェクトを整えていくという風に、自然と役割が定着されていきました。今思うと大変なこともあったのですが、チームを超えて会社の原型が出来上がっていく実感もありました。このメンバーでなら難題でも乗り越えていけると思い、起業を決意したという感じです。

なるほど。前職で培ったチーム力が、リアルインベントの起業に繋がっていったのですね。窪田さんは、村岡さんからのお誘いを受けたとき、現状維持のままIT人材として技術を追求していく選択肢もあったと思います。起業の船に乗るタイミングで大きな決意があったのではないでしょうか？

いや、意外と迷いはなかったですよ。新卒時代から苦楽をともにしてきた信頼関係もありましたし、新たな何かを目指していくとなれば自然と「独立」にはなるのかなとは思っていました。

また、たしかに大変なことは増えるのですが、特定の役職でしか見ることのできない景色や経験にも興味がありました。当時は、エンジニアの領域よりも経営側のマネジメント領域を広げたいという好奇心が強かったのだと思います。また、起業に対してもネガティブなイメージはなく、エンジニアとしてのスキルがあれば最悪の場合何とかなるだろうと思っていました。そこまで振り切れるのも、IT人材の強みかもしれませんね(笑)。

無意識なのですが、最終的に頼るのも窪田だし、最初に相談するのも窪田になっていると思います。窪田が“現場の温度”を正しく拾い、アウトプットしてくれるので、安心して判断を任せています。いい意味で、「昔も今も、これまで通り」というお互いの信頼関係がベースになっていると思いますね。

立ち上げメンバーが前職のプロジェクトチームだったということですね。会社名の「リアルインベント」はどのような経緯で誕生したのでしょう？

たしか、当時のメンバー間で持ち寄った中から選んだと記憶しています。

そうですね、アイディアの段階では色々出てきましたよ(笑)。立ち上げメンバーの頭文字をとって「MOMKOSTY(モムコスティ)」とか(笑)。話し合いを重ねて、私が通っていた小学校の教訓が「自主・創造・開拓」で、そこからヒントを得て、会社の価値観(VALUE)になりました。その中でも「創造的な価値」を追求していくことが私たちのミッションと捉え、「REAL(真の)×Realize(実現)」とInvent(創造する)」という意味を込めて「リアルインベント」にまとまりました。

「MOMKOSTY(モムコスティ)」は懐かしいですね(笑)。会社設立からは着々と社員も増えて、気づけば創業5年で約20名規模の会社に成長しましたよね。当時、総務や人事等のバックオフィスについては村岡さんが全て担っていたと思うのですが、規模が拡大していくにつれて自然と私が担当していくことになったという感じですね。現在はさらに社員も増えて、約40名。フルリモートという働き方も取り入れ、地方で活躍している社員もたくさんいます。

フルリモートを受け入れているワークスタイルがリアルインベントさんの大きな特徴だと思います。それぞれ社員に対する評価軸は、どのように設計されているのでしょうか？ また、今後のIT人材の確保についてどのように向き合っていくべきでしょうか？

スキルや目標への評価軸については、窪田が中心となって作成した評価システムをもとに評価しています。技術的な要素についてはその軸で判断しているのですが、私が主に見ているのは仕事へ取り組む際の姿勢や行動です。

そうですね。定量的な部分は評価システムで数値化できると思うのですが、残りの定性的な部分、いわゆるマインドの部分については村岡さんが見てくれています。評価で大事なのは“納得できること”です。数値的な評価結果だけではなく、会社からの期待や本人が考えるキャリアなども含めて「フィードバック」することによって成長するのだと思います。良いことも、悪いことも直接対話をしてお互い「納得感」がある関係性を築いていくことが重要だと思いますね。

それはその通りだね。IT人材の確保については、地方では“IT＝首都圏”という考えがどうしても強いと感じます。うちはフルリモートという選択肢を敢えて作ることで、「地方だから、首都圏だから」という理由での待遇の差を一切無くしています。むしろ、地方におけるIT人材の給与ベースを上げていくぐらいの強い気持ちで臨んでいます。

実際に地方在住のままリモートワークで活躍している社員からは「地方にいながら東京の仕事ができることがモチベーションになっている」という声もいただいていますよね。同年代に比べて給与が高いことや場所を選ばずに働けることは、IT人材の大きな魅力のひとつですので、地方でも働きやすい環境を整えて、定着させることは私たちの役割と捉えています。

そうだね。社会人だけでなく、地方の学生についても今はおそらく「IT企業に就職したいなら首都圏へ」と無意識に流されてしまっているように思います。“地方×フルリモート”という働き方に共鳴するIT人材が増えていくことで、新たな選択肢のロールモデルを示すことにも繋がり、学生の考え方自体にも何かしら気づきを与えられるのではないかと思います。

今後のリアルインベントが目指す方向性について教えてください。

今後は、地方との繋がりをさらに深め、新たな事業展開の可能性を模索していきたいと考えています。そのためにまずは地方のIT人材(エンジニアやデザイナー)を増やしていくこと。また、私個人としては地方と首都圏を結ぶhubのような役割も見据えています。例えば、全国で活躍しているIT人材や、地方創生の成功事例を紹介したりなど、地方で活躍しているプレイヤーの方々とも広く関わっていきたいと感じています。

そうですね。私も地方には地方の課題があるということを最近実感してきました。そこに対して、「ダメかも…」とネガティブになるのではなくてニーズをしっかり捉えていく姿勢が重要だと思っています。自分たちはプロダクトアウト(技術をもとに製品やサービスを開発する)ではなく、どちらかと言うとマーケットイン(ニーズをもとに製品やサービスを開発する)の考え方で挑戦していきたいですね。

うんうん、まさにそうで、現状は自分の業務でいっぱいになっているかもしれないのですが、自分たちが「地方と関わる」ことで、社員からも「こういうのを作ればいいんじゃない？」という創造のアクティブ状態を自然に創っていきたいと考えています。

そのためには、もっと仲間を集めたいですね！

その通り。「どんな感じなんだろう？」程度でリモートでのカジュアル面談も大歓迎です。青森県を拠点に活躍している先輩社員もいますので、ざっくばらんに相談しましょう。

村岡さん、窪田さん、ありがとうございました。「地方在住のまま、東京の仕事をする」という固定概念にとらわれない働き方実現の背景には、村岡さんの「IT人材の創出」に対する強い想いと覚悟、またそれを俯瞰的に捉え、会社の方針や体制としてバランスを整えていく窪田さんの調整力がありました。創業メンバーであるお二人の強い絆とともに、「地方をもっとおもしろく」という新たな挑戦の風も感じる対談でした。