- 社員インタビュー
ここにはビジネスを支える哲学がある
このインタビューの背景
入社1年目、ウニの養殖事業を担当する渋谷風雅(しぶや ふうが)さん。学生時代、魚類の研究をしていた渋谷さんは、日本の水産業は自然を削っていると嫌煙していました。しかし、ひょんなことから北三陸ファクトリーと出会い、「こういう水産業なら関わりたい」と入社を決めました。渋谷さんの目から見た、北三陸ファクトリーのユニークさとは。
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水産業は自然を削っている
——渋谷さんが今やっているお仕事を教えてもらえますか?
僕はウニの養殖を円滑に進めていくというのが主な業務になります。具体的には、各地で行われているウニ養殖のサポート、養殖に使う餌の販売、あとは新しい地域にウニ養殖を展開させていくというプロジェクトを進めることですね。
——渋谷さんは埼玉県出身だとか。どういうご縁で岩手に?
小さい頃から川の生き物が好きだったんです。そのうちに、川よりも海の方が広いし楽しそうだなーと海の方にも興味を持つようになりまして、いろんな魚の研究ができる宮崎大学に進学しました。宮崎で海釣りを始めたんですが、「昔はもっと魚がいたんだぞ」っていう話を本当によく耳にしました。さまざまな海洋環境の変化が原因なんでしょうけど、特に藻場やサンゴ礁といった魚の生きやすい場所が減ってしまったことの影響は大きいだろうなと感じていました。水産業って自然を削りながら成り立っている産業だなと思っていたので、正直、大学時代は水産業自体にあまりいい印象を持っていませんでした。僕は自然を守っていきたいと思っていたので、削るばかりで回復に力を入れない今の日本の水産業にはすごく疑問を抱いていました。そういう会社に入るぐらいなら、魚とまったく関係ない業種に入った方がいいだろうなと思っていたぐらいでした。
——そんな渋谷さんが、どうやって北三陸ファクトリーと出会ったんですか?
ネットでウニ養殖について調べていた時に、北三陸ファクトリーの記事を見つけたんです。磯焼け(海藻が消え、海の中が砂漠化しているような状況のこと)問題解決のためにウニ養殖をやってる会社があるんだ!と。
——普通の大学生がネットでウニ養殖を調べないと思うんですけど(笑)。
そうですね(笑)。僕が所属していた研究室は海沿いにあったんですけど、干潮の時に歩いたら、岩のくぼみ一つひとつに全部ウニが入っていたんです。さすがに、「これは異常だな」と。ウニの大発生によって、生態系のバランスが崩れているんじゃないかと思ったんですよ。調べてみると、増えすぎたウニによって海藻が食い荒らされて、藻場が消失して、魚の住処がなくなっている。じゃあウニを取り除けばいい。取り除くだけじゃなくて、そのウニを養殖して販売できたらいいんじゃないかって思いついたんです。それでネットでウニの養殖を調べてみたら、もうすでに取り組んでいる会社がいくつかあったんですよね。北三陸ファクトリーもその一つでした。実は他にもウニ養殖を行っている会社の話を聞きに行ったんですが、ちょっと違うなと感じました。養殖をやる目的が、藻場再生ではなく自分たちのビジネスのためになっていると言うか……。
会社の魅力は、事業を支える哲学
——そんな中、北三陸ファクトリーにしよう!という決め手ってなんだったんですか?
第一に、「どこが儲けるか」ということを重視していることです。養殖業って、例えば魚の養殖なんかを思い浮かべていただけると、大きな会社が大規模化して事業を行うっていうイメージがあると思います。そうなると、大きな会社だけが儲かって、漁師さんたちにはお金が回らない。それは稼いだお金が海に還元されないっていうことだと思うんです。なぜかというと、海を守れるのは漁師さんたちだと考えているからです。長年の経験から海の状況もよくわかっているし、海との付き合い方も知っている。フロントに立って海に手を加えられるのは漁師さんたちですから、そういう意味では海を良くするのも悪くするのも漁師さんたち。だから彼らにお金が回るシステムじゃなきゃいけないと思うんです。もちろん水産業という生業も大事ですけど、漁師さんがいなければ、海がなければ水産業は成り立ちません。北三陸ファクトリーは何を基に自分たちの生業が成り立っているのかということをちゃんと考えていて、事業を支える哲学があったんです。
もう一つは、課題解決のために実際に行動しているところです。これは入社してから特に感じるんですが、同業他社の方とお話ししていると、みんな磯焼け問題をどうにかしなきゃとは思っているけれど、実際に行動を起こしているかというとそうではない。確かに途方に暮れるぐらい大きな課題ですが、北三陸ファクトリーは「やろう」と決めてお金と時間と労力をかけて行動を起こしています。それはCEOである下苧坪の海に対する思いが人一倍強いからだと思います。幼少期からこの海で過ごしてきて、豊かだった昔の海を知っている。そこから生まれてくる優先順位なのだと思います。
魚でいっぱいの宮崎の海を見たい
——素朴な疑問なんですけど、「自然を守りたい」っていうモチベーションだったら、就職先は非営利に環境保護を行う団体でもよかったのかなと。営利企業を選んだのはどうしてですか。
あーなるほど。えっと、あくまでも僕の考え方なんですけど、営利企業の方が持続可能性はあるんじゃないかなと思ってるんです。ビジネスで回していける一つの利点って、補助金のような外貨に頼らずとも、自分たちで稼いだお金でやれるところにあると思います。
一方で、非営利活動もやっぱり大事です。藻場を再生させるためには、ウニを取ってるだけじゃダメなんですよ。ウニが海藻を食い荒らして海底が砂漠化しているので、海藻の植林が必要です。ウニは取って養殖すればお金になるけど、海藻を植えてもお金にはなりません。なので、海中造林は「一般社団法人moova」が担っています。moovaは、うちのCOOである眞下が代表理事を務める非営利法人です。僕はmoovaの活動にも携わっていますが、頑張って立ち上げてくれた眞下さんには感謝です。
——最後に、渋谷さんの今後の目標を聞かせてください。
そうですね、明確に一つあるのは、僕がウニ養殖に興味を持つきっかけになった宮崎の海が回復するっていうことですね。あの堤防から海を覗き込んだときに、魚がいっぱいいるっていう光景を作りたい。小さい頃、伊豆の新島(にいじま)っていうところに行ったときの記憶が強烈に残っています。堤防から海を見ると、「ニシキベラ」っていうすごく鮮やかな魚がいっぱいいたんですよ。海面の上からでもたくさんいるのが見えました。これからウニ養殖、藻場再生の活動を全国に広げていって、いつか宮崎の海であんな景色が見られたらと思っています。
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