- 経営層・管理者インタビュー
普通のタクシー会社になるつもりはない、 「人と車で何が出来るか」でチャレンジし続ける
青森営業所の所長として日々新しいことにチャレンジしつつ、常に現場に立つリーダー的存在でありたいと話す下山所長。営業所立上げ時の苦労や、自慢の社員のこと、そして「普通のタクシー会社」になるつもりはない、という思いについて詳しくお聞きしました。
ドライバーとして現場を経験したことが転機となる
北星交通は私の父が社長を務めている会社で、弘前市で60年以上にわたり地域の交通を担ってきました。私がこの会社に入社する前は、大手旅行会社に勤務したのち、東京と京都などのタクシー会社であらゆる経験を積みました。もちろん、失敗や挫折の苦い経験も(笑)。その中で、ドライバーとして現場を経験したことが私にとって転機となりました。
正直に言いますと、若い時はこの仕事がカッコ悪いって思っていたのです(笑)。色んな知識を得て自信を持つことができ、すっかり考えが変わりました。だから社員全員が自信を持って働けるように、ドライバーの育成に力を入れているのかもしれないですね。
弘前本社では、運行管理者(国家資格)として運転手が安全に運行できるようにサポートする役割をしていました。ありがたいことに、ドライバーの接客力は凄く評判がいいです。自分が育てた社員が評価されるのはとても嬉しいしですし、自信にもなりました。
そして、2018年7月に青森営業所を開設することになり、所長として「青森で1番のタクシー会社になるぞ!」という決意をもって青森市に乗り込んできました。
60年70年の歴史がある会社には簡単には勝てない現実
青森市に進出してみて、理想と現実の違いにまず苦戦しました。思ったように上手くはいかなかった。ローカルエリアは配車がメインで、地元の老舗タクシーの力が強く、60年70年の歴史がある会社には簡単には勝てないという現実がありました。自分の考えが甘かったと気付いたのが、ドライバーの保障給が終了まで残り1、2ヶ月の時でした。配車が思うように来ないし、このままではドライバーに稼がせることができないと焦りました。そこで生まれたのが、「人と車で何ができるか」という考え方です。
そこで目をつけたのが、2種免許と介護の資格を持っていた社員がいたことから、福祉施設への「ドライバー派遣」です。介護業界は人手不足で、介護の資格を持った人がドライバーも兼務しているという現状がありました。朝と夕方のみの送迎ドライバーを募集しても全く応募がないからだそうです。そこが見事にマッチングして、安定的に仕事を捻出することができました。最初が上手く行かなかったからこそ出たアイデアでした。
最大のピンチ、支えてくれる社員がいたから乗り越えられた
所長となり最も苦労したことは、営業所立上げ時の社員教育です。青森営業所は別のタクシー会社を買い取って開業しましたので、そのまま残留した社員が30名程おりました。
研修中「こんなことやっても意味がない!」と理解してもらえない人もいて、休憩ごとに人が去っていき、翌日には6名に・・・社長に怒られました(笑)。残ってくれた社員が休みの日なのに「クレジット決済って何だ!?」とか「ナビの使い方教えて」と自主的に練習に来てくれた時は、本当に涙が出るほど嬉しかったです。
他の社員はドライバーを集めるために、休日も返上して必死に会社説明会をしてくれました。6名では開業出来ないですからね(笑)。私の思いに賛同してくれ、真摯に採用活動をしてくれて、感謝しかありません。説明会後の問い合わせがとても多かったですし、担当者自身に魅力を感じて来てくれた人も沢山いて、それも嬉しかったことのひとつです。
ここの社員はみんな信頼できて尊敬できる、そんな人達が支えてくれたから最大のピンチを乗り越えることができたと思っています。
普通のタクシー屋になるつもりはない
これまで、通常のタクシー業務とは違う様々な事業を展開してきました。私は普通のタクシー屋になるつもりはありません。
1つは近い将来、自動運転によりドライバーを必要としない時代が来た時に、この業界は間違いなく影響を受けるはずです。ドライバーの利益を守るためにも付加価値を持たせる必要があります。
もう1つは、「タクシー=おじいちゃん」のイメージを変えたいです。これまでは、この業界で新卒採用はありえないことでしたが、大学へ出向いての採用活動にも取り組んでいます。その結果、20代の社員も増えて、青森県では平均年齢60代が当たり前の業界で、当営業所の平均年齢は40代まで下げることができました。
業界としては、風土もそうですが時代の流れについていく速度が遅いと感じていて、そこも変えていきます。「若い人材の考え」×「ベテラン人材」×「車」で今までにない新しい仕組みを創っていきたいです。
社員が安心して働けるように
北星交通の自慢はドライバーの接客力です。当社は1か月間、時間をかけて教育しており、初めての方でも安心して働けるように、個々の能力に応じて本人が納得するまで丁寧に教育するようにしています。なぜかというと、“ハズレ”のタクシーをつくりたくないからです。お客様にはどのタクシーに乗車しても満足していただきたいですし、社員には自信を持って仕事をしてほしいです。
社員とは普段からコミュニケーションをとるようにしています。特にドライバーは、朝出庫すると夕方まで戻らないため、朝は必ず現場にいて私が点呼をとるように心がけています。直接みんなの顔を見て、変わったことはないか声掛けしたり、良かったことは皆の前で褒めるようにしています。毎日事故なく帰って来られるように、安全確認やモチベーションを上げるのもトップがすることに意味があると思っていますし、社員が安心して働けるように壁はつくらないようにしています。
「自己紹介」は一番譲れない事。そのこだわりとは?
ドライバーは必ず「自己紹介」をするのが絶対のルールで、私にとって一番譲れない事でもあります。なぜなら、お客様の命を預かるものの礼儀として大事なことだと思うからです。誰でも知らない人には命を預けたくないって思いますよね?お客様の目をみて自己紹介することで安心感を与えることができると考えています。
今後の目標としては、当社ドライバーのサービスが認められて、大事なお客さまを安心して預けてもらえるようになることです。お客様を大切にするホテルの専属として指名してもらえるようになりたいですね。
会社としては「人と車で何ができるか」の考えでチャレンジし続けていきたいです。