• 社長インタビュー

「共に進む力」― 地域・業界を巻き込む、美保野グリーン牧場の挑戦と魅力

「共に進む力」― 地域・業界を巻き込む、美保野グリーン牧場の挑戦と魅力

高校を卒業してから「食肉」の世界と共に、ご自身の人生を歩んできた佐々木社長。様々な困難も捉え方を変え、周囲の協力を得ながら仲間を増やし、そして共に乗り越えてきました。そんな佐々木社長と会社の「これまで」と「これから」についてお聞きしました。

会社創業の背景と、事業の広がり

創業者は私の父で、父はもともと遠洋漁業の漁師でした。船から降り、次の仕事を探していた頃知人から「これからは肉が求められる時代になる」というアドバイスを受けたことから、旧種市町(現洋野町)にて、「マルヤス食品」として肉の卸業を始めました。

時代のニーズもあり、飲食店・ホテル・学校給食など、徐々に卸先が広がり、昭和45年に洋野町の店舗を八戸の根城へと移設。卸売業として法人向けの事業から一般のお客様への精肉販売事業へと広がりました。その後、今本社を構える美保野にて羊・山羊・馬などの飼育を始め、パークゴルフ場やレストランの経営をスタート。一般のお客様たちが集まる場所と食肉加工場が共存する現在の「美保野グリーン牧場」に至りました。

社長のこれまでの経歴・あゆみ

私は4人兄弟の長男で、当然のごとくいつかは稼業を継ぐ立場になるだろうと思いながら成長してきました。そのため、高校卒業後は東京の大手スーパーに就職、食肉部門に配属してもらい、食肉加工の技術を学びました。そこで約2年勤務したのち、成城石井へ転職。19歳から29歳までの10年間を過ごしました。当時の成城石井は「成城店」と「青葉台店」の2店舗だった創業期。その後、都内~関東へと広がっていく拡大期と共に私のキャリアも広がりました。

成城石井時代も食肉部門一筋。買い付けから食肉処理、ハムなどへの加工など食肉加工全般に関わりました。また、加工だけでなく、売り場に立ち対面販売をしながらお客様のニーズを聞き、お客様が求める商品とは何か?を考え、販売し、信頼関係作りを行いました。お客様の求める商品を理解し、それに答えるにはどうすればいいのかを考え商品作りをし、買っていただくことでまた信頼を深めていく。そんな繰り返しから販売・営業・マーケティング等多くのことを学びました。

これまでのプライドも、こだわりも捨てた30代

30歳を目途に実家に戻ろうと決めていたので、29歳でUターンしてきました。成城石井では富裕層のお客様を相手に商売をしていたので、当時、その感覚のまま家業に入り感じたのは大きなギャップでした。当たり前ですよね、東京の富裕層の人たちの求めるものと、青森のお客様たちが求めるものは価格も違えば、感覚も違います。同じ食肉であっても10年かけて培ってきたものが全く通用しない…そんな無力感も味わいましたが、その時に「こだわりやプライドを捨てて、頭を切り替えよう」とがむしゃらにやってたように思いますね。

就任3年後に直面した「危機感」

43歳で社長になりましたが、当時の自分が考えていたのは「今の事業を維持していこう」という考え。経営については素人同然、創業は0から始める難しさがあるかもしれませんが、ある程度の規模があるところからを引き継ぐというのは、またそれなりの大変さがあるものです。3年くらい、手探りでやってみて自分が出した結論は「このままだとダメだ、どんどん落ちていくだけだ」ということ。現状維持でなく、上を目指さなければこの会社はいつか、ダメになってしまうかもしれない。そんな危機感に突き動かされ、とにかく人を増やし、事業を拡大していこうと決めました。

人を採用しよう、増やそうと考え、周囲の人に声をかけました。メーカーの方、量販店の方、同業の方も。人が人を連れてきてくれました。当時、人に頼ろうと思えたのは、自分一人では立ち行かないのが分かっていたから。人に頼り、助けてもらいました。その当時に入社してくれた人たちが今現在も会社の中心を支え、代替わりをした当初6、7人だった社員数は現在30名ほどになっています。私はこれまで色々な困難に当たって来ましたが、そのたびに絶対白旗を上げたくないと思ってきました。出来ないと思いたくない、自分が出来なければ人に頼る、人を巻き込む。だから、人が大事です。

「八戸美保野ポーク」というブランド作り

そこから取り組んだのは「ブランド作り」です。豚肉は「八戸美保野ポーク」牛肉は「美保野牛」、ラムは「階上ラム」として売り出しています。

ブランドを作るためには我々1社の意図で出来るものではなく、地域の生産者さんや同業社様をも巻き込んでの合意形成が必要でした。そのうえで様々な方の理解と協力を頂き、少しずつですがこのブランドが地域のお客様への認知が広がって来ているように感じます。今では地域内の有力スーパーで取り扱っていただいたり、全国チェーンの小売業さまからも声をかけていただく機会も増えてまいりました。

これからも、前を向いて進んでいきたい

やりたいことはまだまだ沢山あるのですが、その一つは過去にもトライした輸出です。私たちのブランド肉を、日本国内のみならず、海外に向けて拡げていきたいと考えています。法律・トレーサビリティの管理・安全性の担保など、海外に向けては様々な壁はありますが、私達のブランドを海外へ届けていきたいということは私の中でやりたいことの一つです。

もう一つがこの農場を観光農場にして、もっと地域のみなさんに親しまれる場所にしていきたい!ということ。娯楽や遊べる施設が少ない地方だからこそ、人を楽しませられる場所が地域には必要です。人が集い、観光できたり、畜産業に触れて学べたりするような場作りをしていきたいですね。

経営者として「現状維持ではだめだ」と気づいた時から、常にチャレンジの連続です。常に前を向き続けてきたので、ネガティブな面を捉えている暇がない。だから結果的にポジティブになりました。例えばそれはコロナ禍でも変わりません。私たちの事業の大半は地元の飲食店さまへの卸だったので一時的に売上に大きなダメージがありましたが、スーパーなどの小売店さまとの関係性の中でそれをカバーすることができました。また、アンテナを張り続けている中で、新たな販売先を開拓することにもつながりました。

すべては捉え方ひとつです。

自分で出来ないことは、他の人へ頼む。自分たちだけでできないことは、地域の他社様の力をお借りする。そうやって、自社→青森→日本→世界へと、巻き込む方々を広げながら、皆が良くなるやり方をこれからも模索し続けていきます。

製造業(食品・医薬品・住宅・その他), 卸売・流通業, 小売・販売業, 飲食業, その他美保野グリーン牧場株式会社

美保野グリーン牧場は、八戸市美保野にある食肉の卸売業からスタートした会社です。現在は、食肉の卸売だけでなく自社ブランドである「八戸美保野ポーク」「美保野牛」「階上ラム」の3ブランドを展開し、商品開発から加工、販売までを自社で一貫して行うことで、お肉を通じた“食”の総合プロデュースを行っています。 私たちが提供する商品は、単なる食肉というジャンルに留まらず、これまで培ってきたノウハウや高い加工技術・設備、レシピアイディア等を組み合わせながら食肉に付加価値を付けることで「より美味しく」「より手軽で簡単に」「よりうれしく」を消費者に提供しています。 今後、日本国内はもちろん海外にもブランドを展開し、より多くの方に「私たちが作る新たな価値」を届けていきます。