- 社長インタビュー
ハーブの常識を変え、共にハーブ産業を盛り上げる仲間を
おいらせ町でフレッシュハーブやハーブ加工品を手がけるCONSEの代表 赤石英二さん。自家栽培のフレッシュハーブに対するこだわりや今後のビジョンについて語っていただきました。
すべての始まりは、美味しいハーブに出会ったこと
CONSEは、2015年にフレッシュハーブの栽培を始めたことからスタートしました。もともとハーブに興味があったわけではなくて、地域特産品の商品開発の仕事の一環で「大西ハーブ農園」を訪れたことが、わたしとハーブとの出会いでした。
六戸町にある「大西ハーブ農園」は、ハーブ業界では知る人ぞ知る全国的にも有名なハーブ園で、200種類以上のハーブを育てて全国のレストランなどの飲食店に卸していました。大西ハーブ農園で味見させてもらったハーブの味に感動した一方で、あるレストランで食べたハーブの味の無さに衝撃を受けたことから、同じ品種のハーブでも生育環境や栽培方法によって全く味が変わる、ということを知りました。
最初は男手が足りないとのことで、働きながら空いた時間に手伝っていましたが、次第にハーブ栽培にのめりこみ、自分で事業としてやりたいと思うようになりました。本格的に「大西ハーブ農園」に弟子入りして2年間ハーブの栽培方法を学び、2015年の冬にはCONSEを立ち上げて自家製ハーブの栽培を始めました。
屋号であるCONSEは、消費者や農家・販売者などの協力者とともに、同じ方向を向いて一丸となって進んでいく、という思いを込めて、concept、concession、consensus、consecutiveという4つの英語の頭を取っています。
ハーブの常識を変え、新たなハーブ産業を確立したい
現在CONSEでは、ハーブの普及を事業の大きな柱として、ハーブの生産、加工、販売、ハーブの講座・講演、農業指導・相談などを事業として行っています。栽培しているハーブはおよそ100種類、特にミントに力を入れていて、ミントだけで15種類の品種を栽培しています。
加工販売は、ドライハーブを商品化して販売しています。現在販売中なのはハーブソルトとハーブティーで、ハーブソルトは全3種類、ハーブティーは全6種類の商品を販売中です。
加工所はおいらせ町にあり、ドライハーブ製品はその加工所で製品化しています。
ハーブ講座や講演は、一人でも多くの方にハーブを好きになってもらいたいとの思いから、毎月八戸市で継続して開催しています。40代以上の女性の参加が多く、身体の不調がある方や、ハーブティーが飲みたいけれど市販のブレンドだと合わない、飲みたくても飲めない方の参加が多いです。飲み比べやオリジナルブレンドをつくる講座が人気です。自分が好きなハーブを見つけて帰ってくれると、やりがいを感じますね。
ハーブの個性を伸ばして、美味しいハーブを育てる
CONSEでは、お取引をさせていただく飲食店の方にはなるべく農園に足を運んでいただいて、農園の様子を目で見て、味の違いを体験してもらうようにしています。ハーブは農法によって、まるで別な野菜のように味が変わります。実際に口にしてもらうことでその違いを理解していただけるので、まずは農園に来て体験してもらうことを大切にしています。
CONSEのフレッシュハーブは、見た目を華やかにするだけではなく、しっかりと素材の味を楽しめるものなので、味や香りが強いのが特徴です。例えば、CONSEのルッコラを使ってルッコラサラダを出したら、辛すぎて食べられないんですよ(笑)。野菜の味は実際に食べていただいて初めて伝わることだと思うので、知った上で料理に使ってほしいと考えています。農園に来てくださったシェフの方は、帰り際「どうやって調理しようか」とワクワクして帰られることが多いんです。シェフも知らないハーブがたくさんあるので、創造性が刺激されるみたいです。
フレッシュハーブのほかに、ドライハーブにも力を入れています。今年収穫したハーブのうちの、およそ8割はドライハーブとして商品化しています。旬の時期を逃さずに収穫してドライにしておくことで、あとでブレンドして新たな商品を生み出せるのです。ドライハーブに加工するのに乾燥させる温度や時間は全て自分たちで研究しています。
また、育てるハーブの種類にもこだわっています。CONSEでは、味がはっきりしているものや、ストレスを与えても死ななかった強い品種を中心に栽培しています。ハーブに負荷をかけて育てることで、ハーブそれぞれの個性である味や香りを引き出すことができるのです。ハーブの個性を伸ばす栽培方法は、ハーブの美味しさを追求するCONSEだからこそのこだわりですね。
この農法によって、CONSEのハーブは届いてから2週間ほどは冷蔵庫のなかで新鮮で元気な状態を保つことができます。この鮮度のよさも、飲食店に喜ばれるポイントのひとつです。
草取りも栽培におけるこだわりポイントで、簡単なようでとても難易度が高い作業です。取っていい雑草とそうでない雑草があり、雑草を抜くタイミングも違うので、草取りの方法を覚えるだけでも大変です。
生産から収穫、加工、販売と一貫した業務を行っているなかで、CONSEはとにかく品質重視で妥協をしない、という部分が自慢です。妥協=品質の低下を意味します。ハーブは、効果効能ばかりに目が行きがちで、味は二の次、三の次になってしまうことが多いですが、せっかく作っても美味しくないと続きません。CONSEでは「美味しいハーブ」を追求することで、他社とは違う価値をハーブに見出しています。
美味しいハーブをつくることが、ハーブの魅力を伝えることになる
CONSEは、美味しいハーブを追求することと、将来的にハーブの産業をつくることを目指しています。本当に美味しいハーブを栽培し、ハーブのよさをたくさんの方に知っていただくことで、「ハーブは美味しくない」のが当たり前、というこれまでの常識を変え、新たなハーブ産業を確立していくことを目指しています。
料理面においては、にんじんや大根のように、わたしたちの毎日の生活のなかに当たり前に存在するものとして生活に溶け込んでほしいですね。ハーブティーとしては、お店でも自宅でも飲むコーヒーのようなレベルでハーブティーを味わう方が増えてほしいです。
また、ハーブは品種改良がまだまだ進んでいないので、自然が生み出す造形美にも可能性があると感じています。2021年1月には、加工所の一部を改装して、ハーブのさまざまな活用法を提案できるハーブのセレクトショップをオープンする予定です。自社商品のみならず、ハーブアロマやポプリなど、まだまだ知られていないハーブ産業をたくさんの方に知っていただく機会になればと思っています。
ハーブ産業を盛り上げる農家になろう
今後、自分はなるべく早い段階で農業から離れて経営にまわりたいと考えているので、農園を任せられる右腕人材を求めています。100種類以上ものハーブ栽培に興味があって、本気で学びたいと思う方、本気で農業に取り組みたい方に、自分が持っているハーブ栽培の知識や技術を継承したいです。そのためにも、CONSEでのハーブの栽培方法を確立させ、伝承していく準備をすすめていくことが今の課題です。植物が相手なので、毎年毎年育て方や手入れの方法を試行錯誤していきます。
最終的にCONSEで学んだ技術や知識を活かしてCONSEから生産者として独立してもいいし、CONSEと提携して栽培したハーブを卸してもいいし、CONSEのハーブ農場長としてハーブを栽培してくださっても構いません。
CONSEでハーブ栽培を学び、自分と同じくらい知識と経験を蓄えた方に、おいらせ町だけではなく、日本全国さまざまな地域でハーブを栽培してもらって、その地域の風土や気候に合わせたハーブを作ってもらうことで、よりよいハーブが生産できると考えています。ハーブは種類が多いので、土地に合ったものがきっと見つかるはずですし、CONSEで栽培方法を学んでもらうことで品質も維持できます。ハーブを育てる農家の母数を増やして、一緒にハーブ産業を拡大していきたいですね。それが回りまわって、地域の農業を引っ張っていくことにつながるといいなと思っています。特殊農法なので覚えることも多いですし、大変な面もありますが、仕事に対して妥協をしない方なら大歓迎です!