• 経営層・管理者インタビュー

地域課題解決型の、漁業への挑戦

地域課題解決型の、漁業への挑戦

このインタビューの背景

株式会社北三陸ファクトリー代表取締役COOの眞下美紀子さんに、入社前から始まる現在のキャリアにつながる歩み、入社前後の取り組みや今後の挑戦についてお聞きしました。「人を起点に産業を作りたい」という思いが結実し、現在の事業へとつながっています。持続可能な漁業の実現に向けた、挑戦の真っただ中にいる眞下さん、そして北三陸ファクトリーの皆さんのストーリーをぜひ一読ください!

地域の好循環を創る仕事を

私は洋野町で生まれ、高校生まで洋野町で育ちました。父が八戸でイカ漁の漁師をしていたり、海がすぐ近くにある感覚をもち過ごしていました。そんな中、高校3年生の頃、父の漁師仲間が海難事故で亡くなってしまうという出来事が。父にとってはもちろん、私にとってもショッキングな出来事でした。その当時、私自身に様々な感情が渦巻き、改めて「仕事」と「この地域」について考えるようになりました。当然のように仕事をする父を見ていましたが、改めて考えてみるとこの地域の水産業は父をはじめとした地域の人たちが作っているのだと思うと、いずれはこの地域のために働きたい、地域の好循環を作れるような人になりたい、そんな想いが芽生えてきました。

一方、高校生だった自分にはその当時まだ出来ることも少ないとも思い、大学に行こう、ひとまず洋野の外に出て、視野を広げようと思い進学しました。その当時から「人を起点に産業を作りたい」そんな思いが自分の根底にあったように感じます。

創業者との出会い

当社の創業者である下宇坪の存在を初めて知ったのは2015年。とある雑誌で組まれていた特集ページの「日本を突破する100人」でした。ページをめくると下宇坪さんが載っていて、苗字を見ただけで「この人絶対洋野の人だ!」と分かりました。下宇坪、という変わった苗字は洋野町の方に多い苗字なのです。当時、震災から約5年が経ち、地方創生元年と言われている時期に、私は地域とつながりたい、地域のために何かしたいという思いを持っていましたが「既に地域で課題解決に取り組み、評価されている人が地元にいるんだ」と、驚き、ぜひ会いたいと思い私からメールを送ったことがきっかけで下宇坪と繋がることができました。

その後、東京のとある展示会に出展するという話を聞き、会場で初めて会い、挨拶をしました。第一印象は「大きい人だな」。熱くて、引っ張っていく力がある人なんだなと。それをきっかけに、当時はまだ前職の会社で勤務していましたが、東京での催事をボランティアで手伝ったりしながら、当社の前身である「ひろの屋」の事業に触れはじめるようになりました。

北三陸ファクトリー 東京支部、発足

2015年当時、海藻で勝負していた「ひろの屋」の催事を手伝い、初めて地元の海産物を声高らかに販売する、という体験をしました。地元のお母さんたちが干して商品化されたものをお客様に直接伝えながら売るという仕事は、素晴らしい仕事だと感じていました。

同じ頃、ちょうどETICというNPO主催の「東北オープンアカデミー」という2泊3日のツアーに参加し、首都圏から数名の社会人と一緒に洋野町を訪れ、北三陸ファクトリーの事業や、下宇坪のこれからの事業構想などを聞きました。下宇坪が「これから工場を作り、そこは人が集まる場所にして、賑わいを作りたい、世界中から人が来る場所を作りたいんだ」という夢を語っていて、その構想にわくわくしましたし、「自分の関わり代もたくさんありそうだな」と思うようになりました。それをきっかけにその時に一緒に参加したほかのメンバーに「北三陸ファクトリー東京支部を作ろう、眞下さんが支部長になるなら皆で支えるよ」と励ましてもらい、東京にいながら北三陸ファクトリーをサポートする東京支部を発足させました。

地元と東京を繋ぐ活動を

東京支部としての活動は、わかめの芯抜き体験を企画して池袋のビルの屋上でやってみたり、洋野町の魅力を伝えるピッチに立ち、活動資金を得たり、催事のサポートをしたりと様々。下宇坪の熱が、メンバーに伝播して様々な活動につながっていったような感覚でした。

この東京支部での活動は、今でも地元と東京を繋ぐ大きな力になっています。

また、下宇坪が地域での可能性や繋がりを開いてくれ、一緒に価値を作ろうとメッセージをしてくれたので、私たちはそこに乗っかることができたように思います。地域の中に閉じることなく、業界の中だけに閉ざすことなく、しがらみを気にせず、外に出て行って人とつながり事業を作っていく姿を見て、私も閉ざしていてはだめだな、この人と一緒に事業をやりたい、力になりたいとより強く思うようになり、2016年に洋野町にUターンし、ひろの屋へ転職することを決めました。

漁師さんから、1円でも高く買う

普通の製造業は、自社の利益を増やすために「売り上げは多く、仕入れは安く」を目指すと思いますが、私たちは自社の利益が減ってでも仕入れを増やす、つまり「漁師さんに支払うお金を1円でも多く」を目指しています。それは、北三陸ファクトリーが大事にするのが、地域の好循環を作ることだからです。

確かな品質の海産物を適正価格で仕入れることで漁師に還元し、私たち自身も価値を伝え理解・共感いただける販売先、マーケットを開拓していくのが使命です。海外も含め、まっとうな価格で取引してくださるパートナーを開拓しています。そんな私たちのスタンスに共感してくださる方に、新たにジョインしてもらえると嬉しいですね。

「北三陸から、世界の海を豊かにする」というVISIONに向かって

今年(2023年)5月に会社としてのVISIONを刷新、「北三陸から、世界の海を豊かにする」という言葉を掲げ、会社として、より広い世界を目指すと決めました。足元を見ると、この洋野町は人口1万5000任の小さな町で、超高齢化社会です。漁業の担い手である漁師も、うにのむき手もすでに高齢化し、10年後、15年後の未来を考えると担い手がどれだけ残っているのかを考えると明るい未来を描きにくいのが現状です。30年前は海藻がたくさんあり、それをえさに魚も育ち、漁獲量も豊富で、獲れれば売れ、漁師も潤い、地域も潤う。そんな好循環がありましたが、現在は違います。地球温暖化で海藻は育ちにくく、うにもアワビも獲れないから新たに漁師となる担い手は減っていく…

ここ、洋野町で起きていることは世界の課題だと捉えています。ただ、現状を見て悲観しても仕方ない。より俯瞰して考え、海と人の関係性を再構築することに今後この会社は挑戦していきます。私たちが向き合うのは世界の社会課題であり、この社会課題を事業を通じて解決したいと考えています。持続可能なうにを育てられる漁場を国内外に広げ、安心安全で美味なうにを生産できる体制作りにチャレンジしていきます。私たちの挑戦を共にできる方を、現在募集しています。

こんな方に来てほしい

掲げるVISIONが大きい分、VISIONの達成のために、取り組むべきことは山積みです。事業としていくつものプロジェクトを走らせていますが、それらをマネジメントしてくれるような人に来てもらえるとありがたいなと感じています。例えば、うに養殖のプロジェクト、体験企画を通じてファンづくりを行うプロジェクト等、複数のプロジェクトが同時進行している中、現在すべてのプロジェクトに私自身が関わり、進行をマネジメントしています。それにも限界があると感じており、私と共にプロジェクト進行を担ってくださるような方がいれば、もっとスピードを加速できるのに…と感じています。

また、私たちの事業は、自社の中に閉じることなく、外とかかわりを持って進めていくものばかりです。漁協、行政、大学教授、漁師さんら、あらゆるステークホルダーの方々との利害関係を調整したり、ニーズをくみ取りながら、巻き込み、企画を進めていく。そのようなプロジェクトマネジメントができる人材を求めています。

私たちの会社の強みは0を1にすること。そのためには答えがない世界と向き合う胆力、恐れずに変化を受け入れて進む力、スピードが必要です。目的達成のためには、手段を朝令暮改で変えていくということもしばしばありますが、そんなスピード感の中でVISIONの実現のために一緒にこの事業に没頭してくれる仲間を求めています。何か特別なスキルが必要ということもなく、社員一人一人の長所短所に合わせた適材適所で活躍してもらいたいと思っていますが、スキル以上に「こうありたい」という理想やVISIONへの強い共感を持ってくださる方と共に働きたいですね。

地域課題解決事業, 製造業(食品・医薬品・住宅・その他), 卸売・流通業株式会社北三陸ファクトリー

北三陸ファクトリーは、「北三陸から世界の海を豊かにする」をミッションにマリンビジネスを通じて新しい未来の創造にチャレンジする水産ベンチャーです。 親会社である(株)ひろの屋が設立した2010年から、洋野町の復興から北三陸の復興、日本の課題解決、世界の課題解決と解決したい課題の規模が広がり、同時に私たちの役割や影響力も拡大してきました。 地域復興から地元漁師の後継者不足や所得向上、地球温暖化やウニの食害による磯焼けの課題解決と取り組む中で、「ウニの再生は一石二鳥どころか一石四鳥で海を豊かにする」可能性に気づき、地元洋野町に軸足をしっかり置きながら世界の海の課題に取り組んでいます。 つまり、海の悪者とされているウニを駆除しながら養殖によって活用し、守り育てた海藻によってブルーカーボンを増加させ温暖化を防ぐという好循環を実現します。さらに、ウニの販売利益が地元漁師さんに還元されるよう、「1円でも高く買い取る」取り組みも進めています。