- インターンプロジェクト
材株式会社 淨法寺社長 インタビュー
左:淨法寺さん 右:インターン四木
授業のない長期休み(夏・冬休み)や、在職中長期休暇がとれるタイミングを活用して、インターン先の企業から給与の支払いを受けながら、地域課題解決に取り組むことができるインターンシップ対応型プロジェクトである「青森暮らしインターンプロジェクト」。「青森暮らしインターンプロジェクト2024」に参加してくださった、三沢ホースパーク、オーナーの淨法寺朝生さんに、インターン学生がインタビューをさせていただきました。これからの青森県での暮らしに貢献する担い手を創出する皮切りとなる本企画。本企画を通じて青森県の経営者はどのように人生と事業を振り返るのでしょうか。事業への意気込みや人生観についてお話を伺いました。
Contents
大学生って天才 ー 天井を決めないからこそできることへの期待
ーーインターン四木:自己紹介とインターン事業の紹介をお願いします。
ーー淨法寺さん:
私は、地域課題解決をビジネスにするという仕事を20年間やってきた経営者です。地域の生産品をブランド化するマーケティング事業、シェアオフィス事業、馬文化復活事業などを通して、地域に魅力的な仕事とやりがい、生きがいを提供しています。
今回のインターン事業は、企業目線で言うと、学生にこんな魅力的な会社あるんだよ!魅力的な大人もいるよ!と伝えたくて企画しました。
学生目線で言うと「モチベーションが上がる機会を提供したい」という一点につきます。学生は専門家でもプロでもないし、仕事をしてる身分でもありません。それでも私は、学業と実践は成長するための両輪だと思っています。学びだけでなく実践の場が学生のうちにある方が良いのではないか、むしろ実践を積むことで普段の勉強も楽しくなるのではないかと考え、その場所の1つになろうと思いました。
もう1つは、「こんなことやっちゃうの?!」みたいなものを一緒に作りたいという思いです。「学生だからこの程度でしょ」ということではなく、社会人でもできないようなことを、学生と一緒に実現したいと考えています。大学生のパワーはすごいって信じているんです。
青森が嫌いでハワイに逃げた、南の国が与えてくれた気づき
ーーインターン四木:大切にしている考え方とか若者にメッセージありますか?
ーー淨法寺さん:
20代前半は本当にサーフィンバカでした。もう肌も目も日に焼けて真っ赤になるくらい、1日中サーフィンをしていました。よくハワイにも行っていて、現地のハワイアンと仲良くしていたのですが、ある日彼から言われた「日本の若いのは自分の国の魅力を語れない。」という言葉が衝撃的でした。そこから日本の課題と魅力や、自分のアイデンティティーの元になっている青森の課題と魅力を本気で探すようになりました。みんなにも、日本の魅力を発信できる人材になってほしいです。
上:淨法寺さんと、ハワイアンのカイポ
もう一つメッセージがあって、最初の会社は、前の創業者から引き継いだ時点で数千万円の赤字で、人生終わったかなと思うところまで追い詰められました。しかしその頃、評価軸を、周りとの比較から「自分が変化・成長しているかどうか」に変え、「今の状況は良いとは言えなくても絶対に諦めないで少しずつでも確実に変化し続けること」を目標にしました。というか、そうしないと心がもたなかったと思います。
そういう、人と比べるのではなく、過去の自分と比べるという判断基準は若者に意識してほしいです。安定するし、ひとを責めることも少なくなり、自己成長が続くので社会への影響が大きくなっていきます。毎日やっている人には誰も勝てません。
昔の人の魂を継ぐ ー 馬事業創業のきっかけ
ーーインターン四木:馬の事業はなぜ始めたのですか?
ーー淨法寺さん:
三沢市は、昭和20年頃は馬が8千頭もいた馬の産地だったんです。馬と人間はパートナーとして共に暮らす文化が根付いていたのですが、今や47都道府県で馬が1番少ないのが青森県です。そんな中、馬文化だけは残さないといけないのではないかという直感が8年前に働き、三沢ホースパークを始めました。実際にやってみると、現代人には「自然と1つになること」が極端に不足してることが分かり、そこから得られる感性を養う仕事は必要だなと感じています。
感性を磨く場であり続ける
昔の日本人は感性をすごく大事にしてたんです。一方、現代の日本人が大切にしてるのは知性とかアカデミックなところ。ただ、どちらが良いかを決める時代はもう終わっていて、今は感性と知性を統合するような時代になってきています。そのための感性を磨く時に、やっぱり自然との関わりが重要なんです。例えば、カヌーに乗って川を下る、森を歩く、動物の足跡を辿る、きのこを採る、狩猟するなど、自然と関わる方法には様々あるけど、それを代表するのが馬かなと思っています。三沢ホースパークでは、馬と1つになることで自然と1つになるっていうのを、誰もが簡単に体験できます。馬文化が失われつつあるのは、技術の発展によって馬に代わるものが登場したからでもあるのだけれど、そんな今こそ、馬と暮らすことが必要じゃないですか?と提案したいです。
日本の感性と社会の繋がり
ーーインターン四木:若者に日本の魅力を語れるようになってほしいという事でしたが、淨法寺さんは日本の魅力は何だと思いますか?
ーー淨法寺さん:
日本の感性を使ったもので世界に誇れる代表として挙げられるのが、世界最古の木造建築群である法隆寺、そしてそれを建てた宮大工だと思っています。彼らが感性をどのように「見える化」し、表現していたのかを、世界に自慢したいです。
そして、青森県を代表する感性というのが馬だと思います。馬との関わりを通して、人と人の関わりももっと良いものにできると考えています。例えば乗馬中、目を閉じて、蹄の音を聞いて、普段意識しない音や香りに集中すると、鈍っていた五感が研ぎ澄まされます。それに加えて、馬は共感・共振・共鳴あたりの感覚が鋭く、言葉が無くても実際に乗ってる人の感情をミラーリングするんです。この特性は、人間同士の関わりにおいても参考になると思っています。ジャズをイメージしてもらえたら良いのだけれど、1人がアドリブを披露して、そのアドリブに他の人がノって、周りで聞いてる人たちが感動して、場が暖まっていくような感じです。人間も本来持ってる共感・共振・共鳴の感覚は、最近はあまり使われてないけど、実は会社の空気や居心地の良さとも密接に関わっています。たとえ話ですが、イライラして不機嫌な人がいると周りは迷惑ですよね。逆に、なんかあの人いると空気良くなるっていう人もいます。「気」をつくる能力を皆に身につけて欲しいです。
人間みんな欠点がある。自分を許すことから始まる平和な社会
ーーインターン四木:シェアオフィスはなぜ始めたのですか?
ーー淨法寺さん:
今、シェアオフィスBLUEに入ってる企業は、アメリカのマーケティング会社や、AIを使って映像を作ってる会社、Amazonのクラウドサービスを青森で活用し素晴らしい事例を沢山出してる会社だったりして、オフィスBLUEが凄い場所になっています。最近、インターン期間中の5日間でビジネスアイデアが閃き、そのままここで起業しちゃった学生も出ました。この出来事には、顎が外れそうになるほど驚きましたね(笑)。だからまずは、ここに入居してる多様な尖ったメンバーで世界最高のものを作り出すビジョンが広がっていくと良いなと思っています。そして、5年後にはこの雰囲気を、会社からシェアオフィス全体へ、さらに三沢全体へと広げていきたいです。それが、三沢独自のブランドができるということであり、自分がそのトリガーになりたい、という気持ちがあります。
また、ビジョンを語る時によく、「世界最高に居心地が良いまち」とか「平和の象徴のようなまち」という言葉を使うのですが、これには「欠点活かしができる場所」という意味が込められています。人間は誰しも欠点や隠したい部分を持っているものなのに、今の社会はそこを指摘し合う風潮があると感じています。そんな不安だらけの社会だと、みんなのクリエイティビティも制限されてしまいます。だから、みんなで欠点や恥ずかしいこともおっぴろげて、それをプラスに変えて活かせるまちにしていきたいのです。そのためには、「あなた抜きではこれは成し得なかったんだよ」というのを仲間に伝えていくことが大切なのかもしれません。
インターン生の視点から
4日間の活動から見えたものは、淨法寺さんの優しさと純粋さそのものでした。何百回も通ったであろう道でのトレッキングで毎回出る「うわ〜!すごいなあ!」という新鮮なリアクション。「そういうのもおもしろそうだよね」の口癖とともに溢れ出る事業のアイデア。インターン生を本当の子どものように扱ってくださり、私たちの活躍に涙を流す姿。「〇〇さん来てからホースパーク調子良いんだよね。」、「〇〇天才。」、将来への不安を抱える若者に安心感を与えてくださる言葉から滲み出る優しさは、馬相手にも同じでした。トレッキング中に数回挟む「草休憩」。トレッキングの足を途中で止め、コースにある葉や草を食べて良しとする時間なのですが、これは「人を乗せたら良いことあった」と馬にも思ってもらうための工夫だそうです。ホースパークで働く従業員さんやボランティアの皆さんはとても優しかったのですが、これは、馬が人間の感情をミラーリングするように、淨法寺さんの優しさが周りにも共振している証なのだと感じました。
インタビュアープロフィール
四木 菜々子
青森県三沢市出身。国際教養大学4年生。2025年4月からは高校の講師として県内で働く。
青森県で働くことの解像度を高めたいという思いで「青森暮らしインターンプロジェクト2024」に参加。三沢市の三沢ホースパークにて4日間のインターンを経験。